ぴっこぴこ(仮)

ゲソてんぼくレス2プレイヤーの豆ノベル2018など置いてました

【読み物】『リュネを捜して』(2)

『それは一通の招待状から』

〜プロローグ・初日〜(続)

「え、と。貴方はここの…ぴっこちゃんちの、ココさん?」

ゆらゆらと眩しい髪の女性がひと息調えるような口調で顔を上げ語りかけた。
向かう視線の先、先程のお茶のワゴンの傍らに立っているスレンダーな若い女性が膝をやや折り礼をして応える。様子からして、使用人らしい振舞。

「はい。わたくし、こちらでスタッフをさせていただいているココ、店内・邸内では主より通称としてココナと呼ばれております。どうぞ、ココナとお呼び付け下さいませ」

「じゃあ、ココナ…?」
「はい、さとさま」
「少し気付けになるものを用意お願いしてもいい?」
「かしこまりました。只今お持ち致します」


「…それと、ねえヤンさん?あなたもそう思う?」
「……はい、たぶん…」
「じゃあ、ココナ。付け足しでお願い」


ココナは両方の女性…さとさんとヤンさんを見遣り、申し付けを待っている姿である。


「何か、そう、書くものを。紙とペン、使いやすくてすぐあるものでいいから。お願いできる?」
「承知いたしました、マダム」


ドアのそばの飾りのようなものをココナが引くと、邸内にリン、と抑えたベルの音がして、合わせてココナはドアから深く礼をして出る。



「ぴっ…ケホん」


「無理しないでいいんですよ。まだ目覚めたばかりですよ」
背を起こしてくれた、ヤンさんと呼ばれていたひとが手をやや背中に添えたまま、すぐ左肩の斜めから笑顔で優しく声をかけてくれる。


頷くように、ただ、すこし怪訝な…考え事をたくさん残したような涼やかだけど凛とした瞳のままの、さとさん、も、こちらに微笑みを投げるような様子で、そっとお茶を口に運んだ。


その手にある器を見ながらぼんやりと思う。
茶器もとても好みの…ヘレンドを模したような緑の縁に桃色を帯びた野ばらの絵の散ったセット、ロイヤルコペンの緑のシリーズを思わせるものや、無名の旧いガラスのもの、どことなく懐かしいオリエンタルブルーの絵の小皿などが細々と並んでいる。

ティスプーンは、果物の浮彫の銀器と、やや新しいうさぎのレリーフのものだった。


「そ、そうだ、ぴこぴもお茶を…」
「ピッピこそ。まぁ、1度掛けて、お茶をいただこうよ?」

「まっきちゃん。そうだけど、…いやさとさんも!何でそんなに落ち着いてるの?」

「ピッピ、ぴこぴがびっくりしてるよ」
「え!わ!…そうか、ごめん!ぴこぴ」


まっきちゃんという、ゆったりした上衣を羽織った、さとさんの隣にいる女性が場を変えるような笑顔でくすくすと笑った。
ということは、その言葉に慌てて振り返ったりしている、ふわふわと輝く巻毛にこのお揃いドレスの、きりっとしたひとがピッピちゃん………ちゃん??


ノックの音が小さく早めに3回。

「お待たせいたしました」

ココナの声、そして扉が開く。

追いかけるように小刻みで、でもどことなく柔らかに不規則なリズムが重なる足音と、声。

「したのーーー!ねっ!」
「お待たせでございます、お嬢様方、エホン…」

(続)

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