ぴっこぴこ(仮)

ゲソてんぼくレス2プレイヤーの豆ノベル2018など置いてました

【読み物】『リュネを捜して』

●序章『それは一通の招待状から』

〜プロローグ・初日〜


「……ったら、もう、どうしちゃったんだ?」
「ねえピッ……落ち着いて、って訳にもいかないのは判るけど、一応当たれるとこには私も当たってるから」


ドアのそっと開けられる音とティーワゴンの滑るような軽快な音。茶器の小さく震えるように鳴る音…


「あの、キッチン借りてお茶もらってきました」
「ありがとう、わあ、…ンさんごめんね」

「…とさんはさ、何か思い当たる?」
「それがねぇ…あり過ぎるようで、でもね。あの子でしょ?」
「それなんだよね」


心地のいいクッションが頬に当たっている。
違う、頬が心地のいいクッションに半ば埋まって…額がじんわりする。光は瞼の隙間からもいつも鋭いけれど。いつも?

女性たちの声が話し声としてぼんやり入り込みながら、どうも眠っていたらしいわたしは目を醒ましたようだった。とはいってもどうもまだぼんやりしている。

ゆっくり目を開くと、すぐ近くにしっとりした黒いフレア・ドレスのスカートが目に入った。上質な生地だ。少し上に見えている上衣の裾は柔らかな青みの桃色。こちらも仕立のよいジャケット。

クッションは見ると好みの濃紺に白の刺繍を施したものだった。まるでわたしの作りそうな……作る?


「…ぴこぴ!目覚めたの?」

柔らかい長めの心地よさそうな上着を羽織った、ちょうど斜向かいの女性がふっと声を上げた。脇のゆるやかなウェーブヘアの眩い女性もすっとこちらを向く。ゆらゆら透き通るような水色の瞳……あれは…

素早く目の前のスカートが揺れ、目の前に鮮やかな緑の瞳が現れた。凛々しくて女優みたい、などと思う間に矢継ぎ早に彼女は言った。

「ぴこぴ!ああ、もう起きないかと……いや、何があった?大丈夫なの?」

応えるように身体を起こそうとして、はたと気づいた。
目の前の女性と自分はそっくりな、否、まるで同じ誂えの服を着ている。靴は脱がされ上衣も緩められていたもののまるで同じだ。

「ぴこさん、無理はしない方が。起きます?」
背中にクッションを当て替えて助けてくれた背後の女性に言葉を返そうとしたその時だった。

「……ぴっ…」


え?

周囲も振り返る。ただ、待って。
開いた自分の口を確かめるように。
何これ?…もう一度、言葉を恐る恐る返す…


「ぴっ、ぴぴ、ぴっ……ぴぃ」


喉の奥が乾いていく感覚に目を塞ぎたくなった。


「何ぴこぴ!?何かあったか、驚いたのはわかった、どうしたの!」
お揃い服の女性の声が響く。

ああ、信じられない。

いくらわたしがぴこ…?…??
いくらわたしが(   )だからって?

今、わたし、なんて?
わたしが、何???

(続)

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